Honey・Apple

一次創作メインのイラスト・小説ブログ。(現在企画始動中) 小説の感想等、お気軽にコメントください^^

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2014.04.06 Sun 19:32
ちょっと試しに
『星拾い』のプロローグを書いてみようかと思い立ちました。
どうぞお付き合いください。

追記より
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 『星拾い』

 ep,0
 すっかり暗くなった空に星が輝き始める頃、僕らは森の中にいた。
 生い茂る木々に隠れるように、小さいたき火がパチパチと軽い音を立てて揺れている。
 隣を覗き見れば、騎士の恰好をした男が僕と同じように木の根もとに腰かけて、目の前で揺れる炎をじっと見つめていた。
 「それじゃあ、少し昔の話をしましょう」
 まだ声変わりのしていない高い声で、僕は彼に語り始めた。

 これはまだ、僕が5歳の時だ。
 僕は親戚にあたるおじいさんと小さな集落に暮らしていた。ラトゥスという村だ。
 ラトゥスには少しの畑と少しの家畜、それと果物のなる木があった。三か月に一度だけ近くの町から商人がやってきて色んなものを売りに来るが、ほぼ自給自足の生活をしていた。そんな辺ぴな田舎の村だった。
 僕のおじいさんの家は村の中では大きい方で、庭に畑があった。春には豆を採り、冬には芋を掘った。
 商人が来る日になると、おじいさんは僕に少しのお金を持たせてくれたので面白いものを見つけると好きに買う事ができた。村の子供たちにはよく羨ましがられた。それがなんだか嬉しかった。
 そんなある日のことだ。
 僕が部屋で商人から買ったガラス玉を覗いていた時、窓の外に一筋の光が落ちたのを見た。それは昼だったけれど、ガラス玉ごしにその光は確かに僕の目に映っていた。
 僕は急いで外に飛び出した。それが落ちたのは庭の畑だった。
 豆の苗が一本だめになっていたけど、僕は胸の高鳴りのせいで苗を三本踏み倒してだめにした。
 少し土に食い込むようにして落ちていたそれは、一見してただの石ころのようだった。
 こぶし大の石ころ。
 僕はおそるおそる手に取った。しかしその瞬間、僕の脳内に見たことのない世界が流れ込んできてぐるぐると頭の中をかき回した。視界を、聴覚を、こことは違うその世界に奪われ、そして。
 「あっ」
 僕は思わずそれを手から落とした。
 最初よりも少し浅く土に埋もれたそれは、相も変わらず石の真似をしている。
 意を決してもう一度手に取ってみたが、さっきのようなものは見えなくなっていた。
 僕は少しがっかりしつつもそれを両手で握りしめ家の中に持ち帰った。
 おじいさんが外から帰ってくると、その少し曲がった腰にいつものように抱きついた。
 僕は興奮しながら昼にあったことを早口にしゃべる。
 昼間だったけれど光が落ちたのを見たこと、畑にそれが落ちたこと、石ころのようなものがあったこと、それに触ったら不思議な世界が見えたこと、でもそれは最初の一回しか見れなかったこと。最後に、豆の苗を三本だめにしちゃったことを明かしてごめんなさいと謝った。
 おじいさんは最初驚いた顔をしたけど、話してる間に嬉しそうな顔になり、最後は優しく僕の頭を撫でてくれた。
 「苗はいいんだよ、また明日新しいのを植えよう。
  それより、ラポルに星拾いの素質はあったとは…おじいさん嬉しいよ」
 「星拾い?」
 初めて聞く単語に僕が首をかしげると、おじいさんは目を細めて笑った。
 今日は疲れただろう。そう言って僕を椅子に座らせると、おじいさんも古いロッキングチェアに腰かけ二、三度その身を揺らした。
 「さて、何から話そうか……」
 その晩、おじいさんは珍しく夜が深くなっても僕をベッドに連れて行かなかった。
 一晩中ずっと、星拾いについて教えてくれたのだ。

 星拾い。
 この世界にはそんな職業があるそうだ。
 地上に降り落ちた星を拾って、それの持つ記憶を読むらしい。
 このことを「星を読む」と表現するのが一般的だとおじいさんは言った。
 つまり僕が昼間に見たのは星の持つ記憶で、星を読めたということだ。
 星を読めるのは素質のある人だけで、なかなかいないらしい。それでも世界にはたくさんの星拾いがいる。
 「僕、もっとたくさんの星を読みたい」
 「そうかそうか。ならば星拾い協会に入るといいじゃろう」
 星拾い協会とは、星拾いが読んだ記憶を記録として保管する機関だ。
 星の持つ記憶は、その星がまだ空に浮かんでいた時に見ていた地上の姿だと考えられている。つまり地上の歴史だ。
 星拾いが一つの星から読み取れる記憶の多さには個体差があり、かつ断片的であった。これを他の記憶とつなげるのはとても難しい。
 そこで、たくさんの星拾いたちが読んだ様々な記憶を一か所に集め一つにつなげようと考えた者がいた。そうして設立されたのが、星拾い協会である。
 協会に所属している星拾いたちは世界中を旅して星を読む。
 僕はその話をわくわくしながら聞いていた。その頃の僕にはまだ難しい話で、よくわからないことも多かったけれど、それでも僕の知らない世界の一面がこの世界にはまだたくさんあるんだと、そう思った。
 「僕、星拾いになる!星拾い協会に入って、世界を旅するんだ!」
 声高らかに宣言した僕をおじいさんは嬉しそうに、でも少し寂しげに眉を下げて、愛おしげなその表情を顔に湛えて見つめていた。

 「そうして僕は旅に出たんです」
 パキッと音を立てて火の粉がはねた。
 彼は僕の長い話をじっと耳を傾けて最後まで聞いていた。
 寝てるんじゃないかと思うくらい静かだった。
 「だがそれはお前が5歳の時だろう?それまではどうしてた」
 よもや今の僕が5歳だとは言うまい、と言わんばかりに彼は眉をひそめて僕を見ている。
 当然だ。僕はもう10歳を過ぎている。
 「おじいさんに言われたんです。旅をするにはまだ早いから、12歳になるまでは家にいるようにって。
  それまでは色んなことを教わりました。
  村の外にはとても広い世界があることに、星の墓場という場所があること、それから…星を食らう魔物がいることも」
 そこまで言うと、彼は片眉を上げた。
 彼が言いたいことはおおよそわかる。
 だがその前に、どうして今僕が彼とこうしてたき火を囲んでいるかという話をしよう。
 僕は、魔物に襲われたのだ。


 故郷のラトゥスを出て、一番近いフィクサーの町に向かっている途中だった。
 このあたりでは魔物は出ないと聞いていたのに、運悪く僕はそいつと出会ってしまった。
 大きな狼みたいなそいつは、だらしなくよだれをボタボタと地面に垂らしながら僕の前に現れた。
 初めての魔物。それどころか僕にとっては初めての旅だ。村の外に出ることさえ初めてだった。
 初心者の初心者、ド素人。
 おじいさんに色んな話を聞いて知識だけは豊富だが、実際は聞いてわかった気になっている子供と同じ。
 実際まだ子供だし。
 走馬灯のようにおじいさんから聞いた話が脳内を流れていく。
 走馬灯だなんて、縁起の悪い。でも僕は思い出した。
 星拾いが魔物と遭遇したときは、星をおとりにして逃げるんだ。
 魔物は星を食べる生き物だから星を食べている間に逃げられる、と。
 しかしどうだっただろうか。たしか魔物は星を食べると言っても「まだ記憶を読まれていない星」を食べるのではなかったか?
 あいにくだが僕は最初に村で拾った星しか持っていない。これは一度記憶を読んでしまった星だ。きっと投げても意味がない。それに僕の大事な最初の一つだ。簡単には手放したくないという思いがあった。
 いやそれよりも、恐怖で体が動かなかったのが本当のところだろう。
 僕は一歩もその場から動けなくなっていた。
 魔物は目と鼻の先だ。
 ぎゅっと目をつぶった。魔物の鼻息が聞こえてくる。
 だめだ、やられる!
 そう思った時、高い風切り音が耳をかすめ魔物を真っ二つにした。
 「おい小僧、こんなところで何をしてる!もうすぐで死ぬところだったんだぞ!」
 目を開けると魔物がいた場所には石ころが一つ落ちているだけで、他には何も残っていなかった。
 僕はただ茫然とそれを見つめることしかできなかったが、誰かが肩を乱暴に引き寄せたため僕の視界いっぱいにその人の顔が映り込んだ。
 「聞いているのか!」
 騎士のようだった。眉を吊り上げてこちらを叱責している。
 しかし僕は助かった命に安堵するあまり、涙と鼻水で顔面を汚しながらだらしのない笑みを浮かべていた。
 これは彼が後になって言ったことだが、あの魔物と負けず劣らず汚い顔だったそうだ。失礼な。

 僕はここまでの経緯を思い出して笑う。
 彼が言わんとしていることはおそらく、魔物のことも知っていたのならどうしてその対処法をしなかったのか、ということだろう。しかしすでに話したように僕は旅のド素人だ。そこまですぐに対処できるほど慣れてはいない。
 魔物と出会ったことが、全ての運の尽きだったとしか言いようもないのだ。
 だけど一応言い訳を並べておくことにする。
 彼に説教されるのは嫌だ。だって怖いし。
 「魔物の対処法も知っていました。でも僕は読み終えた星しか持ってなかったんです。
  魔物はまだ記憶の読まれていない星を食べるのでしょう?」
 「馬鹿者!
  それは魔物が記憶を持っている星を好物としているだけで、記憶のない星を食べないわけではない。
  記憶にかかわらず星を投げておけば逃げることくらい可能だ」
 な、なんだって…?
 つまり僕は逃げられる可能性をみすみす逃していたというわけか。
 それなら怒られても仕方がない…。
 僕があからさまにしゅんと小さくなると、彼は少し狼狽して目を逸らした。
 「だ、だがまぁ…お前のようなまだ幼い者が星拾いとして旅をするなどなかなかないことだ…。
  よく頑張ったな」
 慣れない手つきでさわさわと遠慮気味に僕の頭を撫でる彼。
 なんだ、案外優しいのかこの騎士。
 僕は内心ほっとしながら、たき火に一本枝を放り込んだ。
 旅はまだ始まったばかりだ。


 ▽continue...
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